収納は、最初から全部つくらなくてもいい。
家づくりの打ち合わせをしていると、
「収納は、できるだけ多い方がいいですよね」
という話になることがあります。
確かに、収納は少ないより多い方が安心です。
でも一方で、家を建てる前に
「何を、どれくらい持って、どこに置くのか」まで、すべて正確に想像するのは難しいものです。
先日、2年前にお引き渡ししたお住まいへ、メンテナンスに伺いました。
そこで見せてもらった収納の姿が、なかなか興味深いものでした。

ここは、キッチンにつながるパントリーです。
設計の段階から収納が必要になることは分かっていたので、左右には高さを変えられる可動棚を設けました。
食品だけでなく、日用品や雑貨なども収納できる場所です。
実際に2年経った現在も、いろいろなものが置かれていました。
きれいに飾られた収納ではありません。
でも私はむしろ、こういう状態を見られることがとても参考になります。

右側には食品やストック類。

左側には日用品や、普段よく使うもの。
高さを変えられる棚なので、収納するものに合わせて使い方も少しずつ変わっています。
完成写真だけでは分からなかった、
「実際の暮らしの中で、収納がどう使われるのか」
が見えてきます。
でも、全部をつくったわけではありません。
パントリーの隣には、土間収納があります。
こちらにも収納が必要になることは、設計時から想像していました。
ただ、ここには最初から棚をつくらず、あえて余白を残しました。

なぜなら、外で使うものは、ご家族によってかなり違うからです。
アウトドア用品なのか。
子どもの外遊び道具なのか。
工具なのか。
タイヤなのか。
そして、その量も暮らしてみないとなかなか分かりません。
「収納が必要だから、とりあえず棚をつくる」
のではなく、
暮らしてから決められる場所があってもいい。
そう考えました。
そして、2年後。
今回訪れてみると、その何もなかった場所に棚ができていました。

私たちがつくった棚ではありません。
住まい手さんが、自分たちでつくられた棚です。
実際に暮らして、
「ここには、こういうものを置きたい」
「この高さに棚があった方が使いやすい」
と分かってからつくられたもの。
だから、そこにはそのご家族なりの使い方があります。
私はこの棚を見て、
これで良かったんだな。
と思いました。
「完成させない」という選択。
家づくりというと、
引き渡しの日に100%完成していることが良いことのように感じます。
もちろん、建物としてはきちんと完成させなければなりません。
でも、
暮らしまで完成させてしまう必要はないのではない
かと思っています。
家具を置いたり。
棚をつくったり。
庭に木を植えたり。
暮らしながら、「ここをこうしたい」
というものが少しずつ生まれてくる。
その時に手を加えられる余地を残しておくことも、家づくりのひとつです。

この家では、キッチンからパントリーへ。
そして、その先の土間収納へ。
使う場所の近くに、必要なものが置かれています。
完成した時には何も置かれていなかった空間が、2年という時間を経て、そのご家族の暮らしの場所になっていました。
Houseではなく、Homeへ。
設計者がすべてを決めてしまえば、完成した瞬間はきれいです。
でも、その家で暮らすのは私たちではありません。
住まい手自身が、
「ここに棚をつくろう」
「これはここに置こう」
「もう少しこうしてみよう」
と手を加えていく。
そうやって少しずつ、
Houseが、その家族のHomeになっていく。
今回、2年後の暮らしを見せていただいて、改めてそんなことを感じました。
家は、建てた時が完成ではない。
暮らしながら育てていける余白も、大切にしたいと思います。
感謝・誠実・愛
家は人が住んでから初めて家になります。私たちはその空間を「ホーム」と呼びます。
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